第三に、大高城にいたと思われる松平元康(後の徳川家康)の行動が不可解である。
松平元康は桶狭間からたった4キロメートルのところにいた。見張りを出していなかったのか、桶狭間での戦いに気づかなかったようで援軍に行かなかった。
ところが、戦いの後、大高城を出て、さっさと岡崎城(桶狭間の戦いの前までは朝比奈泰朝が城代で、元康は駿河の義元の下に留め置かれていた)に入っている。これはどういうことか。
第四に、桶狭間の戦いの後、取り残され、織田方に包囲された鳴海城の岡部元信は、開城して、信長から返された今川義元の首を持って駿河に帰るが、その途中で刈谷城(水野信元)を攻めている。これも謎である。
今川方の岡部元信が攻めたと言うことは、刈谷城(水野信元)は織田方だったということなのか。
尾張東部の沓掛城、鳴海城、大高城、が皆今川方になった中で、三河に取り残された刈谷城(水野信元)が織田方のままだったとはとても思えない。もしも織田方だったなら、今川義元は刈谷城を第一に攻撃するはずではないのか。水野信元は今川方だったのか、それとも織田方だったのか。
なぜ梁田政綱は沓掛城を拝領できたのか、謎である。
以上の疑問や謎を、一人の女性を登場させることで解き明かしていく。この女性は架空の女性で、物語はフィクションではあるが、史実は踏まえたものになっている。
なお、登場人物の回想を綴ったかたちで物語は語られているので、時系列や時制に留意していただきたい。
1 桶狭間の戦いの謎
2 戦い前日
3 戦い当日
4 近藤景春の回想
「拳を突き上げる信長」
5 木下と梁田の回想
「信長と杜若の再会」
6 大高城の松平元康
7 木下と梁田の回想(戦い後)
「信長の戦略」
8 木下と梁田の回想(戦い後)
「杜若の策」
9 帰城した景春と杜若
10 信長勝利直後
11 一ヶ月後の岡崎城の元康
12 一年後の景春の隠居所
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